研究・教育・社会啓蒙・機関広報などの各目的で,研究者個人から機関,あるいは国の事業として取り組みが進んでいるデジタルアーカイブ(あるいはデジタルリポジトリー,デジタルライブラリー)に関するワークショップを開催しました.
今回のような趣旨での開催経験がなかったこともあり、ゆるいプログラム構成にしたことが議論に発展したとも言えるでしょうし,指揮力不足のご指摘もいただきました.
参加者は41名(研究者,学生,大学/公的機関/企業図書館,学会,企業).
回答の多くからWS再企画を望む声をいただいたことは,主催者としても安堵しているところです.
WS後,講演者のお一人である植田憲一教授から貴重なコメントををいただきましたので,講演者・参加者と共有するため先生のご了解を得てご紹介します.またWS直後に新聞号外なみの早さでWS概要とコメントをブログ掲載いただいた佐藤さん,坂東さんにも感謝を込めて併せてご紹介します.
- リポジトリ・ワークショップに参加して(pdf) 必見!
- かたつむりは電子図書館の夢を見るか
- あおばと通信
議論の焦点となったことは
- 研究の過程で生まれるラボノート,発表原稿,学会予稿集などから研究論文として学術論文誌に(査読をへて)出版するまでの段階の,多種多様なものを,知的生産物として一緒たにして保存することへの,研究者感覚とのズレ.
- 公開する(すなわち研究者・教育者・学生・一般社会などがアクセスし,利用する環境)ことの責任を誰が持つか-ということを無視して(あるいは運用規則として明示しない)ことの危険性への指摘.すなわち「研究目的」と「社会啓蒙」は別のこととして捉えるべきという主張.
の2点であったかと思います.研究環境を支援するのか,機関成果というPR目的なのか,あるいは一般人も利用する電子図書館ということなのか,それぞれ役割が違うのだから,それに伴う運用責任は違うはずという指摘は,私自身も考え抜いていなかったと思い,自分が関わる(論文収集という特定的な網羅に拘らない)研究成果データベースの開発・運用では,この視点を肝に銘ずる必要を強く感じたところです.例え機関を限定しないといっても,組織に属する以上,その組織の名前が何らかの形で社会にでる以上,考えておかなければならないことだと思うからです.
WS参加,そして冒頭の講演者の一考が,参加された皆さんの今後の活動にふと思い至る場面があるとしたら,本WSは大成功だと思います.
超多忙な中から説得に応じて講演を引き受けてくださった講師各位,まだ残暑が残る京都に参加してくださった皆様,有り難うございました.谷藤幹子(2009年9月)